2016/05/01

子供だって気を使う

トロントに来て、ホームステイを出て初めて住んだのは、カナディアンファミリーの家の一部屋。
その家はオーナーとその息子、オーナーの彼女とその娘と、私を含めて3人のテナントの計7人が住む家。
オーナーもオーナーの彼女も、子供達もよくしてくれたのですが、いろんな事情があって私はその家を半年経たずに出ました。


先日彼と健康のために週に2日は肉類を取らない、ベジタリアンデーを作ろうという話をしたのですが、その時思い出したのがアンバーのこと。
もっと野菜が必要な私たち*これ私作ではありません

アンバーはその家のオーナーの彼女の娘。
当時まだ10歳のアンバーと彼女のお母さん(オーナーの彼女)はベジタリアンでした。
私を含め、その他の人たちは肉類も食べるので、まな板や包丁などは肉用、野菜用と別れており決して間違えないようにと住んだ当初に説明を受けました。

アンバーのお母さんはとてもスタイルが良く、彼女が20代の頃からもう長い間ベジタリアンであること、アンバーも動物が好きだから自分の意思でベジタリアンであることを選んだのだとアンバーのお母さんは私に話してくれました。

オーナーからは、彼女たちに気をつかって肉を食べないなんてことはしなくていい。
包丁やまな板のルールさえ守れば食べたいものを食べて全然構わない、とは言われていたものの、たまにキッチンで料理をしているとアンバーとお母さんがやってきて料理を始めることがありました。
私が肉類を使っていないときは何も問題ないのだけれど、たまたま肉を調理している時なんかは決まってアンバーのお母さんが、肉を食べなくても元気でいられる、その肉はもともと生きている動物だったのよ、というようなことを遠まわしに、でもカナダに来たばかりの私でも十分わかるように言ってくる。

そのうち私はその家では肉類を調理することをやめました。

その家に住んでしばらくした頃のこと。
私の部屋ではインターネットがつながりにくくなり、それを伝えにオーナーの部屋行くと、そこにはオーナーの彼女しかおらず、要件を伝えると彼女がモデムの位置を調整してみると言ってくれたのです。
私がお礼を言って部屋に戻り、ちょうど彼女がモデムの位置を調整していた時にオーナーと息子とアンバーが帰宅。
モデムを触っている彼女に対してオーナーはいきなり怒鳴りだしたのです。

二階の私の部屋にいても耳を塞ぎたくなるような大声のため何があったのかと急いで階下に降りると
"これには触るなって何度も言ってあっただろう!!!"
どうやらモデムのことでオーナーが彼女にキレていることがわかった私。急いで、
"ごめんなさい、私がインターネットに繋がらないって言ったから、彼女は私を助けようとしてくれただけなの"
というもオーナーの怒りは収まらず、
"Cotoはいいから自分の部屋に戻っていて。これは俺と彼女の問題なんだ"
といい、彼女の方も私に部屋に行くように言うので部屋に戻った私。

部屋に戻ってからしばらくしてもオーナーの怒鳴り声は10分程度続き、こんな風に人が怒鳴るところを見たことがなかった私は文字通り震えが止まらず、部屋を出ることができませんでした。

怒鳴り声が止むとオーナーが私の部屋にやってきてさっきまでのことが嘘のようにいつも通りの穏やかな声と笑顔で、
"さっきはびっくりさせてごめんね、モデムの件は何度も何度も触らないでって話をしてあったんだ。君が知らなかったのは仕方がないから、今度インターネットが繋がらなくなったら彼女じゃなくて僕に直接に言ってほしんだ。わかったね?"
といって戻って行きました。

翌日、オーナーがいないときに彼女に改めて私が謝ると、
"いいのよ。多分あれはモデムがどうってわけじゃなくて、彼の機嫌が悪かったのね。
たまにあるのよ、その度に出て行けって言われるけど、私とアンバーが部屋を借りて出て行くとしばらくすると彼は戻ってきてほしいって頼みに来るのよ。"と彼女。
私が、あの時オーナーの息子もアンバーもリビングにいたよね。彼らは大丈夫だったの?大人の私でも怖かったんだけど、と言うと
"彼らは大丈夫。慣れているから"

しばらく平和な日々が続き、怒鳴り声の恐怖も薄れていたある日、オーナーが息子と夕食を食べに行くんだけど、Cotoも一緒に行かない?奢るからと誘ってくれました。
お言葉に甘え、一緒にイタリアンレストランへ行った時のこと。
アンバーと仲のいいオーナーの息子が、昨日アンバーと何をして遊んだよ。などと話していた時、ふと私が
アンバーは自分の意思でベジタリアンなんだってね。えらいと思う。というと、オーナーと息子は顔を見合わせ、オーナーがこんなことを言ったのです。

"アンバーは僕たちだけでレストランに行くとベーコンを食べるよ。
アンバーはお母さんがベジタリアンでいて欲しいのをわかっているからお母さんの前では食べないんだ。アイスクリームだってそう。キャンディーだってそう。
アンバーは本当は食べたいけど、お母さんが体に良くないって信じているから家ではいらないって言うんだ。アンバーは痩せているだろ?僕は肉だって砂糖だって体には必要だと思うけど、自分の彼女と言えど他人の子供の育て方にはとやかく言えないからね。"

それからまたしばらくして私にとっての2度目の怒鳴り声がオーナーたちの部屋から家中に鳴り響いた時、私はその家を出る決心をしました。

お母さんに気を使って食べたいものを食べないアンバー。
お母さんの彼氏に気を使って、怒鳴り声が響いても元気で笑顔でいるアンバー。
あの家を出てもう2年以上、彼女が元気で幸せに育っていることを祈るばかりです。
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